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朝日町から世界に。誰もが働きやすい会社を目指して

今回は、朝日町で1985年に創業し、チップ抵抗器を製造している朝日電子株式会社(以下、朝日電子)の代表取締役社長である福澤義司さんにお話を伺いました。

朝日電子について教えてください。

弊社は、富山市にある北陸電気工業株式会社の関連会社です。この場所は旧小川中学校の跡地であり、1985年に北陸電気工業がその土地を購入し、朝日町に企業進出しました。
朝日電子という名前ですが、朝日町に企業進出したのだから、地元にちなんだ名前を付けようということで朝日電子という社名になりました。
北陸電気工業には、幾つかのグループ会社がありますが、この朝日電子は中でも主力の関連会社として収益的にも大きな柱となっています。

そうなんですね。ここが元々中学校だったというのは、初めて知りました。学校だったということもあり、会社の周りには多くの桜の木がありますね。

毎年4月になると、敷地内に満開の桜が咲く

朝日電子の事業内容と強みについて教えてください。

世の中のエレクトロニクス機器には、それを機能させるための電子回路が構成されており、その回路には様々な電子部品が搭載されているのですが、弊社では数ある電子部品の中でも最も代表的なチップ抵抗器というものすごく微細な製品の開発と製造を行っています。それを月に約50億個生産し、この地から世界各国に出荷しています。

世界各国に出荷しているということですが、どのような国に出荷されていますか?

現在、出荷の半数が国内のメーカーで、残りの半数が海外のお客様へ輸出をしています。特に多いのは、中国や東南アジアです。中国や東南アジアと言っても、いわゆる現地企業ではなく、ほとんどの取引先は中国、東南アジアに進出している日系企業です。他には、アメリカや欧州地域にも出荷をしています。

なるほど、日系企業と主に取引を行っているのですね。
チップ抵抗器は、例えばどういった製品に使われているのでしょうか?

いわゆる電子機器と言われるものには、必ずといっていいほどチップ抵抗器が使われており、AV機器や通信機器、家電製品には多く使われています。最近、弊社の事業としても最も増えてきているのが、自動車向けです。自動車というのは、以前までメカ部品の塊だったのですが、今ではエレクトロ制御によって電子部品が多く使用されており、そこにはチップ抵抗器もたくさん使われています。自動車向けの部品は高い信頼性が要求され、弊社でも重点的な品質管理のもと、安心安全な商品づくりを目指して日夜業務に励んでいます。
また、特殊なところでは、JAXAが打ち上げている人工衛星にも弊社の抵抗器が認定されています。JAXAが正式に認定している部品メーカーはわずか20社しかなく、そのうちの一社に弊社も選ばれています。現在、宇宙を飛んでいる日本から打ち上げられた人工衛星は、弊社の抵抗器が搭載されています。
このように世の中のエレクトロニクスの分野には、様々な場面で弊社の製品が採用されており、現在取引のある企業は約700社にのぼります。
一般的によく耳にする大手の家電メーカーとも直接取引をさせていただいており、皆さんの身の回りには必ずと言っていいほど弊社の製品が活用されているはずです。

現在、宇宙を飛んでいる人工衛星にも朝日電子の抵抗器が認定され、そして使われているのは、とてもすごいことですね。

チップが細かいので、無くならないように紙に貼っている

今後の目標があれば教えてください。

弊社では、「顧客満足の限りなき追及」を品質の方針として掲げ、定められた中期経営計画のもと、5年先には現在の売上を倍増する目標を立てており、継続的に社会に貢献し続ける企業を目指しています。

御社で働いている方々について教えていただけたらと思います。

正社員と非正規雇用の社員を合わせて総勢約280名が働いています。正社員は、朝日町を中心とした近隣地区の方がほとんどですが、他には北陸電気工業からの出向者や外国人実習生、派遣社員などで構成されています。富山県の一番端という土地柄もあり、中々人が集まりにくく、人口減少による少子高齢化が進む中で地元の泊高校も令和4年3月に閉校してしまいました。この先も人手不足が我々の最大の課題ですが、色々な雇用形態を活用しながら、引き続き地元企業としての責任を果たしていきたいと思っています。

正社員の男女比は、男性よりも女性のほうが多く、男性が43%、女性が57%となっており、約6割を女性が占めています。
弊社が扱う製品は、砂よりも小さい製品で、そんな微細な製品を扱う繊細な作業は、どちらかというと男性よりも女性のほうが向いているということで、弊社では女性の戦力をすごく大きな強みとして捉えています。
実際に、製造部と生産管理部の管理職10名のうち、5名が女性の管理職です。

女性社員が働く様子

社員が働きやすい職場の環境づくりのために取り組まれていることはありますか?

弊社では、男女を問わず働きやすい職場の環境づくりに取り組んでおり、産休や育休といった福利厚生の制度整備はもちろん、復職後の育児期間中の時短勤務など本人のライフスタイルに合わせた働き方で個性と能力を発揮できる風土づくりを尊重しています。
現在は、女性社員の大体3割程度がパートとして短時間勤務をしています。いわゆる家庭と仕事を両立した働き方を選ばれている方が多いです。また、男女を問わない管理職の引き上げに向けたリーダー育成教育や中途採用、シルバーエイジの雇用拡大にも積極的に取り組んでいます。

女性を多く雇用するようになったきっかけは何ですか?

富山県の地域性は、女性がしっかりしていて、よく働き、活発で強い意志を持った人が多いということ、また微細な製品で、すごく繊細な作業なのでそういった作業は女性のほうが向いているなと思ったので女性の雇用者数を増やしています。


社員が働いている様子

ありがとうございます。

朝日電子の敷地内に太陽光発電設備があると思うのですが、設置しようと思ったきっかけを教えていただければと思います。

太陽光パネルは、2016年に設置しました。
再生可能エネルギーの推進が社会的にも強く求められてきている中、元々中学校だったということもあり、土地が広く、空き地が多かったんですよね。その土地を有効活用するために、国の固定価格買取制度という制度を利用した売電事業として始めました。我が社の事業としては、太陽光発電で発電した電気を売電することで収益を得ています。
現在は、発電した電力を100%地元電力会社に販売していますが、万が一の有事の際に電力供給が途切れた場合は、工場内の生産の補助電源として内部にも引き込めるようになっています。

普段は、御社内で使われるのではなく、地元電力会社のほうに販売しているということで、とても良い活用方法だと思いました。

太陽光パネルは、何枚設置しているか教えていただけますか?

現在、敷地内で約2,500枚設置されています。月に100,000kWhの電力を発電しています。昔に比べて、日照時間も増えているため発電量は増えています。夏場に比べると冬場のほうが発電量は減りますが、最近は冬でも太陽が照っているのでそこまで大きな差はないです。

太陽光パネルは敷地内に2,500枚設置している

太陽光パネルを2,500枚設置されていて、月に100,000kWhを発電しているということで、大変驚きました。
太陽光発電以外で、環境に配慮した取組は行われていますか?

色々取り組んでいるのですが、弊社のCO₂排出量削減目標として、2030年までに2017年度比46%削減ということを目標に定めています。
内部の生産で使う電力は、北陸電力㈱からの供給ですが、北陸電力㈱の「かがやきGREEN」という再生可能エネルギーを100%利用する商品に切り替えました。今までの電気料金よりも2割ほど高いのですが、CO₂削減に向けた一つの社会的アピールということで昨年契約をしました。
また、工場内の空調システムには地下熱を100%利用しております。ちょうど、朝日町が黒部川の扇状地にありますので、地下水が年間を通して13~14℃程度と一定の温度を保った地下水が湧き出ることから、夏場は冷たく、冬場は割と温かい地下熱を利用した空調システムを取り入れています。

また、焼成炉・乾燥炉というセラミック基盤に貴金属ペーストを硬化させるための高温で使用する装置があるのですが、それらは約800℃という高温の炉を使用します。その際に膨大な電力を消費するので、作業効率や稼働率を上げることを重視しながら、電力使用量の抑制にも努めています。

最近では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取組も強化しており、工程管理のデジタル化やペーパーレス化も進めています。

様々なことに取り組まれているのですね。他に何か取り組まれていることはありますか?

商品でいうと、自動車が徐々にEV車(電気自動車)に転換されるなか、自動運転や安全装置などもより充実していくので、お客様の環境負荷軽減への取組に寄与できるよう、弊社が持っている商品のラインナップを環境に配慮した商品に変えていきたいです。

現在、環境に配慮した様々なSDGsの取組を行われていると思うのですが、今後、何か取り組んでいきたいことはありますか?

弊社が持っている固有技術の強みを生かして、近年社会で求められているDXやGX(グリーントランスフォーメーション)への取組の強化を軸にしながら、材料費のコスト削減や出荷する際に使用する梱包材の削減、工程の見直し等を通じて環境負荷軽減活動を更に強化していきたいと思っています。

最後に、朝日町と今後どう関わっていきたいか教えてください。

弊社の競合メーカーは、人件費が安い中国や東南アジアといった新興国がほとんどですが、長く地元に支えてもらったことの責任がありますので、この先も継続して地元に愛される企業でありたいと思います。人件費や労働力ではハンデもあるのですが、日本の高い品質力と技術力を生かし、その中で地元の雇用を維持していくことで地元に根差した企業としてより貢献していきたいと思います。

今回、取材させていただいた朝日電子では、世界に誇るチップ抵抗器という電子部品を製造し、地元に根付いた企業として誰もが働きやすい職場作りを進められています。また、太陽光パネル設置や空調システムには地下熱を利用したりと様々なSDGsに関連した取組が行われていることを知ることができました。
今後、更なる朝日電子の活躍がとても楽しみです。





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