朝日町を支える老舗の料亭。変わらぬおいしさをこれからも
今回は、朝日町で創業80年を超える老舗「料亭月見家」の氷見雅浩さんにお話しを伺いました。月見家は氷見雅浩さんと奥様である由夏さんの2人で営んでいます。
退職後から本格的に
実はずっと料理に携わっていたわけではないんです。関東の大学を卒業後、黒部の会社で働いていました。料理をすることは好きで家の手伝いもしていたのですが、自分も若く、まだ遊んでいたいという気持ちもあり、迷いながら就職しましたね。でも、働きながら心の中では家を継ごうという気持ちもあって「一度きりの人生だし、やりたいことをやるべきだ」と思い25歳の時に会社を退職しました。料理の道を進むには基本を学ぶ必要があると思ったので、退職後は知人の紹介で住込み修行をしていました。
住込み修行を経て”板前”へ
富山市で住込み修行をしていて、高卒の人や学校を中退した人など、自分より若い人と一緒に料理の勉強をしていました。自分のお店を持つ板前さんから料理の基本を3年間学び、28歳に実家に戻り、板前として料理場に立つようになりました。当時一緒に住込み修行をしていた中で自分でお店を持った人も何人かいましたね。
昔の月見家はどんな感じでしたか
当時(平成初期)は結納の会食を女性の家で行うスタイルから料亭やホテルの個室で行うスタイルに変わってきた時代で、月見家で会食する方も多かったです。それより少し昔、僕が学生の頃はお食事だけされる方が3割くらいで、ほとんどは芸子さんを呼んだ宴会でしたね。この辺は今よりもお食事屋さんが多く、芸子さんの下宿先も近くにあったので、宴会の席に芸子さんがいることが多かったのを覚えています。月見家にも毎日、日替わりで芸子さんが何人もいて、外に出れば芸子さんの下駄の音がカランコロンとたくさん鳴っていましたね。
現在、月見家は何代目になりますか
僕で3代目になりますね。40歳頃から中心になって店を営むようになりました。
”今”一番おいしいものを楽しんで
お客様にはできるだけその季節の食材を使った料理を提供しています。春先であればホタルイカや白エビ、山菜等が旬です。夏はアユやサザエ、秋はきのこ類、冬はブリやヒラメといったところですかね。素材の味を生かしつつ、目で見ても楽しめる料理の提供を心がけています。
朝日町の食材は使用されていますか?
朝日町は海、川、山がある自然豊かな町であり、朝日町産の食材は魅力あるものが多いと感じます。山菜を提供することが多いのですが年中採れるわけではないので、塩出しをして保存が効くようにしています。あとは、まめなけ市場で販売されている朝日町産のお米や食材をよく購入しています。
月見家自慢の一品を教えてください!
どの料理もお客様に満足いただけるよう心がけていますが、強いて挙げるとするならば…「ごま豆腐」ですね。母が京都の知り合いから習ってきたものを月見家でも提供するようにしました。お客様からも好評の声をいただいています。
月見家さんご利用の際は予約のみですか?
現在、ご予約のみとさせていただいており、コース料理での提供としています。完全予約制のコース料理のため、食品ロスを防ぐことができますし、お子様やご高齢の方には食べやすい大きさにするなど、お客様のご要望に合った料理を提供することができる、それが良い点ですね。
時には県外からのご利用も
完全予約制なのもあって町内のお客様がご利用になることが多いですね。町外ですと入善や黒部、上越からもお越しいただいており、春の四重奏時期は県外からの予約申込みもあります。機械があまり得意ではなく、特にSNSを活用した情報発信は行っていないのですが、朝日町観光協会ホームページや富山観光ナビのお店紹介ページを見て来られる方もいるのかなと思います。
やってきてよかったと思うのはどんな時ですか?
来ていただいたお客様に「おいしかったよ」と言っていただけるのが嬉しいですね。特に、毎月来てくれるお客様には「また来たい」と思っていただけるよう、何回食べても「おいしい」と思ってもらえるような工夫を心がけています。「おいしかった」との口コミから来てくださる方もおり、地道とは思いますが、お客様一人ひとりに満足していただくことがもう一度来てくれる要因に繋がっていると実感しています。
月見家さんが大事にしていることは何ですか?
「常に丁寧に心を込めて」を大事にしています。新規、リピーター、お子様からご高齢の方など、これからも様々なお客様が「来てよかった」と思っていただけるような料亭月見家でありたいと思います。何度もお越しいただいている方にはいつも「おいしい」と思ってもらえるような心を込めた料理を提供していきたいです。
お客様に全力ですが、僕も中々いい歳になってきたので、自分の体にも気を付けながらやっていきたいですね。(笑)
朝日町に移住してお店を開かれている方、これからお店を開きたいと考えている方へメッセージをお願いします。
朝日町は人が温かい場所だからね。困ったときは助け合える、そんな町だと思うので、のびのびやってもらえたらと思います。今の若い方は情報発信も上手なのでたくさんの方が朝日町に訪れるようになったら嬉しいですね。
僕は料理の道を歩む前からこれまで色々な方に助けてもらってきました。今度は、これまでの経験を生かしていろいろな方の力になれればいいと思います。
今回は「料亭月見家」の氷見雅浩さんにお話しを伺いました。飲食店は地域の活性化を支える大きな存在であり、月見家さんが日々行っていることはSDGs「11.住み続けられるまちづくりを」「12.つくる責任 つかう責任」に繋がります。氷見雅浩さんは板前になって31年になります。今日も奥様と一緒に調理場に立ち、素敵な料理を”心込めて”作っておられます。今後も元気に末永く、朝日町にある大切なお店の1つであり続けて欲しいです!