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県内トップクラスの和牛!その秘密は餌にあり!【肉質向上×フードロス】

今回は、朝日町で肉用牛農家を営んでいる柏慶太さんにお話しを伺いました。柏さんは、牛を飼育し出荷する、いわゆる第1次産業を営んでおられます。

このお仕事に就いたきっかけを教えてください。

 実家(立山町)が同業だったこともあり、将来、自分で牛を持ちたいと思っており、大学卒業後、あさひ農場に誘われこの牛舎で働くようになりました。当時働いておられた方々は高齢で引退されたので、今は自分1人でやっています。

あさひ農場の牛舎

柏さんが営んでいる第1次産業とは具体的にどういったものですか?

 第1次産業にも色々ありますが、私の場合、畜産業の肉用牛肥育経営になるかと思います。子牛を市場で購入して肥育し、出荷するといった流れです。石川や新潟、岐阜の各県の市場に直接見に行って生後8〜10か月の子牛を購入し、生後28か月程度まで肥育します。ここでは和牛のみ肥育していて、和牛の頭数は県内1だと思います。

出荷の様子
生後28か月の牛は結構大きいですね

お仕事の内容を教えてください。

 毎日牛を見ることです(笑)。朝5時に見回り・餌やり、9時から牛舎等の掃除、15時から餌やり、21時に最後の見回りまでが1日の大まかなスケジュールで、これを1年間365日行います。それなりの頭数がいるので餌やりや掃除も時間がかかります。季節に合わせた動きとしては、暑い季節は扇風機を入れる、冬は窓を閉め切って牛舎内温度を下げないようにするなど牛の暮らしに支障が出ないようにすることです。なので、繁忙期なんかないくらい毎日忙しいです(笑)。

奥に映る牛は休憩中かな?
実は牛は人に比べて寝る時間が少ないらしいです。

365日!生き物を育てる=いつ何が起こるか分からないのは大変そうですね…。

 確かに休みが無いので大変なのは確かです。牛舎には約250頭の牛がいますので、毎日の見回りも中々時間がかかりますね。ですが、牛は悪くないですし、この仕事が好きなので大変ですけど頑張れます。

牛を肥育するうえで大切にしていることを教えてください。

 やっぱり牛を第一に考えることです。1匹倒れたら周りも倒れちゃうので。毎日見回りを欠かさないことはもちろん、餌も工夫をしています。牛が健康に育ち、良い肉質になるように心がけていて、令和5年度にはJA全農とやまが主催の「富山県畜産共進会肉牛の部(枝肉)」で優等賞1席に選ばれました。多くの方に美味しい肉を提供できるようにこれからも日々頑張りたいです。

☆受賞写真☆

牛の餌を工夫しているとのことでしたが、具体的にはどういったことを工夫しているのですか。

 牛の餌には牧草や稲わらの粗飼料、トウモロコシの実や大豆、麦などの濃厚飼料と大きく分けて2種類あります。私たちでいうところの粗飼料は主食、濃厚飼料はおかずになります。餌については基本的に仕入れしています。工夫という点では、朝日町のお店から酒粕を購入し濃厚飼料として与えています。酒粕は牛の食欲増進を促すほか、肉の食味向上に繋がっていると言われており、うちの牛たちも好んで食べてくれますし、格付けも上がったと感じています。

濃厚飼料
トウモロコシの実や大豆などを細かくしてあります。
酒粕を濃厚飼料に混ぜて与えています。
牛からの評判も上々!

「多くの方に美味しい肉を提供したい」とのことでしたが、私たちのような『食する側』について思うことはありますか。

 そうですね…。畜産業は臭いがするなどから、あまりいいイメージが持たれていないことが多いです。ですが、皆さんが日頃食べる牛・豚・鶏などは、僕も含め全国で時間と愛情をかけて肥育している方々がいて、皆さんの食卓に並んでいるということを思って食べていただけると嬉しいです。

そうですね。生き物を育て届けてくれる方々への感謝、とても大事だと思います。牛の暮らす環境やストレスなどで肉質に影響があるんでしょうか。

 影響はあると思いますし、ストレスを感じる原因は様々だと思います。牛にも気が強い牛・弱い牛、太りやすい牛・食べても細い牛、人懐っこい牛と様々です。牛舎内の1区画には4~6頭が一緒に生活しているのですが、生活する環境によって、毎日の生活にストレスを感じてしまうことはあります。人と同じですね。気が強い牛は周りの牛と喧嘩することがあり、ストレスを与えるほか、で相手の体を傷つけてしまうので角を切るようにしています。また、場所が狭いためストレスがかからないよう、体の大きい牛は4頭、細い牛は6頭程度などに区分けし、牛の体格に合った暮らしにしています。

みんな仲良くしようね。

毎日の見回りが非常に大事だということがよく分かりました。

休む暇がない中ではありますが、これから新しく取組たいことがあれば教えてください。

 今、餌を外部から仕入れているので、自分で作ることができればいいなと思いますね。例えば自分の田んぼを持って、牛の糞や尿を含んだ堆肥を活用し、粗飼料である稲わらを自分で作るみたいに、いずれは1人で牛関連の仕事サイクルをつくれるようになりたいです。
ただ、うちの牛たちは物凄く食べるので(笑)。簡単じゃないかもしれません。

…ちなみに柏さんの牛たちは餌をどれくらい食べるのでしょうか。

ざっくりですが月50トンくらいです。

…なるほど。長い道のりかもしれませんね(笑)。

餌やり
今か今かと待ちわびる牛たち

 今回は柏慶太さんにお話しを伺いました。柏さんの取組は「2.飢餓をゼロに」「12.つくる責任 つかう責任」に繋がります。餌として与えている酒粕は本来、産業廃棄物となることが多いですが、利用し、肉の格付けアップに繋がっている、環境にも配慮したとても良い取組だと感じました。第1次産業は農作物や畜産物など、作るもの(生物)に重点がいくため、不定期な事業形態になることが多いと思います。今こそデジタルと1次産業が融合し、さらに魅力ある職に変化してほしいですね。