農業は楽しい!~花でまちを彩る、米でまちを豊かにする~
今年もたくさんの観光客を魅了した、あさひ舟川「春の四重奏」。今回は、「春の四重奏」でお馴染み、チュリストやまざきで農業を営む山崎修二さんにお話を伺いました。
180°真逆の世界へ
農業をする以前は、エンジニアとして働いていましたが、結婚を機に、義父である山崎久夫さんの農作業を手伝いに行き、トラクターで作業をしながら「こういう世界があるんだ」と感動しました。サーバールームという日の当たらない環境から、青空の下で外の空気に触れながらの農作業は180°違う世界でとても魅力的であり、徐々に「農業をしたい」という気持ちにかわっていきました。
一年の仕事内容を教えてください。
一年を通じて、主にチューリップの球根栽培・菜の花の菜種栽培・米作りを行っています。チューリップの球根は、富山県花卉農業協同組合へ出荷し、菜種やお米は、JAなどに出荷しています。農閑期といわれる冬は、チューリップの切り花を販売しており、ふるさと納税でも取り扱っています。基本的に出荷や自身で販売することがメインで、皆さんの口コミを頼りに(笑)いろんな方にウチの商品を知ってもらえたらなと。
春の四重奏を通じて”まちおこし”に大きく貢献されていますね。
”まちおこし”と言われる程大層なことはしていませんが、自身が携わる「春の四重奏」を通じて、毎年多くの方が見に来てくれるのは嬉しいですね。今から30年程前に義父が、「朝日町の残雪と桜に、チューリップと菜の花を掛け合わせると面白いだろうな」という想いから生まれた「春の四重奏」は初挑戦の2009年から15年続いており、毎年、たくさんの方々のご協力があって実現できています。見に来られた方々の「楽しかった」や「チューリップを直接買いたい」との声が嬉しく、来年も四重奏が実現できるように頑張りたいと思います。
ほかには、毎年行っている田んぼアートで、昨年は地元小学生のほか、富山大学のマレーシア留学生も参加してくれました。
ここでしか見れない日本唯一のチューリップがあります!
チュリストやまざきでしか生産されていないチューリップが『春うさぎ』と『ブラックダブル』です。『春うさぎ』は富山県花卉試験場で交配研究を重ね、『ブラックダブル』はオランダ産のチューリップになります。この2品種は、毎年4月下旬頃に咲く遅咲きのチューリップで、春の四重奏を彩ります。お越しになる際はぜひご覧ください。
会社名がチュリスト(チューリップを作る人)やまざきだけあって、チューリップへの想いが熱いですね!米作りはどうですか?
チューリップに負けないくらい米作りにも力を注いでいます。国が農地面積の集約のため大規模農場化を推進しており、大規模化されたことで、農地面積あたりの労働時間とコストが削減できました。
また、毎年何か新しいことにチャレンジできないかと考えていまして。昨年、2018年に農研機構が開発した『にじのきらめき』という品種を新たに契約栽培し、今年から種まきの予定です。『にじのきらめき』は、稲が倒れにくく、コシヒカリに負けないくらいおいしいうえに、コシヒカリより4俵も多く収穫できる多収穫米です。
毎日が楽しいマルチタスク。多忙な毎日も一から手掛けることにやりがいを。
春から初夏にかけて球根の堀り上げ・菜種の採取、秋は新たな球根・菜の花の植え付けをしています。切り花用のチューリップは、掘上げた球根を8月に低温処理し、10月に植えて温室で温めることで、球根は春が来たと勘違いし、12月に花を咲かせ、12月末~3月にかけて販売しています。米作りは、冬に準備、春に田植え、秋に収穫となり、チューリップ・菜の花と並行して行っています。
一から手掛けたものが自然の中で形になっていくことにやりがいを感じ、農業は自分に合っているなと思いながら、以前勤めていたエンジニアという仕事も、一からプログラミングしたものが思うように動くことに達成感を感じていたので、業種としては180°異なりながらも似ているなと、今の歳になって感じるようになりました。今の仕事は大変な時期もありますが、商品を通じて直にお客さんと関わることが多く、お客さんの嬉しいを間近で見れるのは大きな+α要素であり、次も頑張ろうと思える大きな力になります!
日々の仕事で気をつけていることはありますか?
富山は1年の内200日くらいが雨なので、雨が降ったあとの地面を畑にする作業が難しいです。例えばチューリップの場合、球根を植える畑を夏場に決め、雨が流れるように排水対策をしっかり行い、畑を作るよう心がけています。富山県は、適した気温と豊富な水資源があるほか、排水性の良い土壌で球根栽培に適しており、大きな球根になりやすいため、チューリップの球根生産量が全国トップクラスです。梅雨時の堀上げが大変ですが。
サラリーマンと農業どちらも経験されていますが、違いはありますか?
大きくは時間とお金ですかね。8時から仕事が始まって5時に終わり、土日は休み。会社に貢献することで安定した給料が貰えるといった決まり事があるのがサラリーマン。農作物を第一にスケジュールが決められ、朝早い日もある、その年の収穫量やコストによって毎年収入が異なるのが農業ですかね。農業自体は楽しいですし、自分の時間で始められるメリットもありますが、大変なこともあります。それはどの仕事も同じなので、これから仕事を選ぶ方には好きと思える方を選んで欲しいですね。
毎日の仕事で大変だと思うことは何ですか?
朝早くから仕事をするときや作業が多い時期は大変ですね。今は体が元気なので大丈夫ですが、これから大変と感じるときが来ると思います。最近は、デジタルを活用したスマート農業が取り上げられていて、作業の効率化や女性の農業進出に大きく貢献していますが、小さな農家では、取り入れたくてもコスト的な問題があり、中々ハードルが高いです。そういう面でもこれから先大変だな…と。
修二さんが思う農業の魅力は何ですか?
一から作る楽しさと商品を通じてお客さんと直に関われることです。できた商品に一喜一憂し、お客さんの喜ぶ顔を見て明日からまた頑張れる、次はこんなことにチャレンジしてみようと思えることが大きな魅力だと感じています。また、農業は、人々の命を支える生命産業ということを日々感じるようになりました。
これから農業を始めようと思う方へメッセージをお願いします!
サラリーマンの場合、体が悪くなっても誰かが代わりにやってくれるシステムですが、農業は自分が倒れると作業がストップするケースが多いので、健康第一で頑張りましょう(笑)。農業はやってみると楽しい部分が多くありながら、大変そうに見えることがあると思います。なので、まずは体験でもいいので、農業に触れてみて欲しいです。
取材をするうえで、修二さんが手掛けるチューリップ、菜の花、お米は『どこかで誰かを笑顔にする』そんな要素がふんだんに含まれたものだと感じました。これらの取組は、SDGsの目標である「2.飢餓をゼロに」「11住み続けられるまちづくりを」「12つくる責任つかう責任」に繋がります。チュリストやまざき産のチューリップ、菜の花を見た時、お米を食べた時、自然と頬が上がっているかもしれませんね。これからも体に気をつけて、来年の「春の四重奏」も楽しみにしています!
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