“繋がり”を大切にして持続可能な海を守る。ウニを育てる泊漁協
寿司ネタとしても人気の食材ウニ。
先日、朝日町の漁港で「ウニにキャベツを与えて飼育している」という噂を聞きつけました。
ウニってキャベツを食べるの…?
そもそもウニの飼育とは一体…?
謎を解明するため、泊漁協代表の脇山さんにお話を伺ってきました。
-ウニちゃん!かわいいですね!
そもそも何故こちらでウニを飼育しているんですか?
いま実はこのウニたちが海で相当な悪さをしているんですよ。
ウニが沿岸の海藻を食べ尽くして「磯焼け」という症状を起こしています。磯焼けによって藻場(もば)がなくなると、海藻を餌とするアワビやサザエなどの生物がいなくなってしまうので、漁業に大打撃を与えるんです。
そこで泊漁協と漁師率いる魚突き愛好家たちがタッグを組んで「ウニ間引き大作戦」という海の環境保全活動を今年の6月から始めました。
しかし獲れるウニは中身がほとんど空で食用として食べれるようなものではなかったんですよ。
-このウニを食用にするために飼育しているのですか?
そうですね。いまは泊漁協で育てているけれど、今後食用にするため飼育の受け入れ先を探しているところです。上手くいけばこのウニをレストランにも提供できるようになっていければいいと思っています。
それでSDGs完璧でしょ?
-素晴らしい!それは完璧にSDGsですね。
ちなみに人が普段食べているウニの身はウニの生殖巣。つまり卵とか精子の部分なんです。しかし、いま育てているうちに卵を産んで中身が空っぽになってしまっているから。もう少し育て方を考えないといけないんですよね。
-産む前に食べてしまわないといけないってことですね。
そう。ちなみに人参を食べると赤くなるんですよ。黄色く色付けするためにかぼちゃも与えたりしています。
-なんというか漁協って少し閉鎖的なイメージがあったんですけど、泊漁協さんは外部の方たちと様々な取り組みをされていますよね。
僕はいろんな人と繋がることが大好きなんですよ。
人と繋がっていかないと何も始まらないと思っていて。まず繋がってみてどんな考え方を持っているかを聞いて、上手くいくなと思ったら「一緒にやろう」と声がけすることをずっとやっています。
泊漁協の漁師さんたちも外から来た人間だし、外から来た人間は嫌がらない。そういった外部から来た人たちの力を借りないと漁業は衰退するだけ。
日本の人口の中には漁業を目指している人たちが一定数いるけれど、生まれた場所だとか地域性によって阻害されてしまう。それを阻害しちゃいけないと思うんですよ。
こちらに住んでしまえば、他所者じゃなくなるんだから。
来たものを拒んで「ここは俺の海だから他所者はダメだ」と入れないなんてことはしないです。
–「住んでしまえば、他所者ではなくなる。」
移住してきた身としては、なんだか目頭が熱くなりました。
僕はとにかく繋がりを大事にしているんです。
持続可能というのはすごく簡単な言葉だけれども、日本が昔から持っていたものなんですよ。「もったいない」という言葉とか。
それをしっかり具現化してきたのがSDGsで、いまみんなが考えさせられている。要するに言葉があることによって考えるんですよ。
どうしたら自分の漁協が未来永劫繋がるんだろうかと。
そう考えたときに、漁協はまず漁業者不足。
新しい人を入れないと回らない。人と人とを繋げて新しい取り組みをしていく。
そういったことを考えて、ひとつひとつの点が回りだせば町自体も好循環に動くはずなんです。ひとつひとつの企業や団体が動くことによって、朝日町全体の活性化に繋がっていくと思いますよ。
-今後取り組んでいこうと思っている活動があれば教えてください。
この船を今後観光漁船にしようと考えています。
朝早くに船上から太陽を見たり、クルージングを漁船でできるのは良いでしょ?
いま朝日町に来ている博報堂さんとも「ふつう漁師と会えないよね」と話していて。例えば普通に渋谷の町を歩いていたって漁師には会えない。
ここに来ると「会える漁師がいる」というコンセプトが良いんじゃないかと。
海を全然知らない人は、魚をどうやって採っているかすら知らないから、そういうことを説明してもらえるのは面白いですよね。
-それは面白い体験ですね!ぜひ参加してみたいです。
朝日町のことを知らない人に町の良さを伝えるためには、実際に来てもらって食べてもらうことが大事。
僕らは階段の一番下なんです。観光に来る→観光に来た人たちが食べる→どんな場所なのか詳しく見てみたいっていう役目の階段の中の一番下。
そして最終的に移住定住。いきなり住んでみようとはならないんですよ。
やっぱり朝日町のいいところをちゃんと育てて、それから足を運んでもらって、町の人たちがいい人ですねとなってはじめて人が来るようになると思いますよ。
-お話を聞かせていただき、ありがとうございました。泊漁協の今後の活動そしてウニたちの成長を楽しみにしています!