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CO2排出最小の「小水力発電」で持続的なまちづくりを


小水力発電は、川に設置した取水口からとった水を高低差のあるパイプに流し込み、水の勢いで水車が回転することで電気がつくられる仕組みになっています。

そのためすべての発電方法の中でも二酸化炭素排出が最も少ないことで環境保全の面でも注目を集めています。
これはSDGsが掲げる目標のうち、主に「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「11.住み続けられるまちづくりを」に繋がります。

そんな小水力発電を来年6月から朝日町笹川地区で導入するべく、現在現場工事に取り掛かっている株式会社深松組の深松さんにお話を伺いました。

株式会社深松組 北陸支店代表の深松さん


-まず小水力発電の導入に至ったきっかけを教えてください。

実は大正7年に、笹川地区には水力発電所があったんです。北陸電力が電気を送るようになるまでは、その水力発電所が動いていました。そのこともあって、私としては小水力発電ができないかなとずっと模索していました。

そんなとき、笹川地区の水道管が老朽化していて、すべてを直すには3億円ほどかかるという事実が発覚しました。
その費用が何とかならないかと弊社の社長と話したとき、ちょうど小水力発電の可能性地域を探っていて、調べた結果、朝日町の笹川に発電可能な場所があるということでした。

笹川地区は深松組の発祥の地でもあるので、ぜひ実現させたいと思い、工事費を賄うことはできないかという話から始まりました。

-小水力発電を導入することで工事費が賄えるというのは、どういった仕組みになるのでしょうか。

小水力発電で作られた電力の売電することで、収益を生み、水道管の更新を行い、再生エネルギー+インフラ整備という仕組みを作りました。
もとは3億円かかるはずだったものが、長期的に見たときには笹川地区の負担ゼロで導入することができるという話だったので着工に至りました。

笹川にて来年の6月から稼働できるよう現在工事を進めています。

-小水力発電を行う上で水量が足りなくなる心配などはなかったのでしょうか。

1年かけて水量検査をしっかり行いました。
その結果、想定の80%で十分発電ができるということが分かっているため、水量が足りなくなるという心配はありません。

-小水力発電が適している土地と、適していない土地というのは何が異なるのでしょうか。

水力発電というのは水量と落差で発電機を回すので、水量の違いになります。その圧力で水車を回しているので、水量が多ければ発電量も増加します。

発電機につながる水路


ちなみに、笹川の小水力発電は、取水口のところから発電機まで約100mの高低差があります。


-県内でも小水力発電を行っている地域はあるのでしょうか。

いくつもありますよ。朝日小川ダムに1つ。農業用水を利用したものが山崎地区に1つあります。
朝日町だけでも、2つの小水力発電所があります。

当初は水道の問題があったため、発電に使用する水を水道に使えないかということを考えていましたが、県の方で発電以外に使うことは許可されないと。
発電所で使う水は、発電以外で使ってはならないという法律があるんです。

-水力発電に使った水を水道に使ってはいけない理由は何なのでしょうか。人体に影響があるとか?

人体に影響があるわけではなく「水利権」の問題になります。
川の流量を変動させてはならないので、法律で定められています。

川の水は無料だと思われているけれど、すべて権利を持っています。例えば、一級河川は国土交通省。二級河川は県が権利を持っています。
笹川は二級河川だけれど、県が権利を持っているエリアと、町が権利を持っている上流のエリアに分かれています。

-ちなみに一級河川と二級河川の違いというのは何なのでしょうか。

一級河川は、県をいくつもまたぐ河川のこと。
二級河川は、ひとつの県内だけに流れている河川のことを言います。

-そうなんですね。一級河川と聞くと水質の良い川をイメージしていました。

富山県で言うと、黒部川、常願寺川、神通川、庄川が一級河川に該当します。二級河川は、この辺りだと笹川、上市川など。

なので河川によって工事を行う管轄が異なります。一級河川の工事を行うのは国土交通省。二級河川の工事を行うのは富山県。その他の占有の工事を行うのは市町村と決まっているんです。


-最後に今後新たに取り組んでいきたい事業があれば教えてください。

水力発電所が完成してから取り組んでいきたいのは、木質バイオマスです。木質バイオマスは、木質のチップなどを燃やしてその蒸気で発電機を回すものになります。

間伐といって、森の木を切り倒して、適切な生育状況にするため伐採をする必要があるのですが、その木が切り倒されたままになっているところが多いのが現状です。
なので、そのまま放置されている木や、売れ残った材木を利用して木質バイオマスができないかと検討しています。

なおかつ、山を整備することで、森林の持つCO2の吸収力を高める効果があるので、そのCO2を吸収する権利を売ることができます。
これが可能になれば、町が目指す「ゼロカーボン」に繋がるし、新たな地元の雇用を生み出すこともできます。

-一つの取組から様々な可能性が広がっていくというのは素晴らしいですね。

例えば、杉の木を切ったところに、伸びるのが早い広葉樹を植えて山の再生を図っていく。山が富んでいけば、栄養分を含んだ水が川に流れて、川や海にも良いプランクトンが増えて魚も増えていく。
こうした循環システムを作ることが、私が生きている間にやりたいことです。

-まさに「住み続けられるまちづくり」に繋がる話ですね。実現できることを楽しみにしています。お話を聞かせていただきありがとうございました!


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