「もったいない」の気持ちから生まれた、お母さんたちの新たなコミュニティの場
「ほしい子ども服」をおさがりでもらうことができて、「着なくなった子ども服」を簡単に寄付することができる、子ども用品の「おゆずり会」。
おさがりを使うこともSDGsに貢献したサステナブルな取り組みの一つです。
今年の四月から朝日町のお母さんたちが、家印株式会社から運営を引継いだボランティア活動ですが、土日の開催時には町内参加者だけに留まらず、お隣入善町や黒部市からも参加者が集まる人気イベントとなっています。
そんな取り組みを行っている子育てサークル「なのはな」の一員として活動されている善田さんに活動についてお話を伺ってきました。
ーまずはじめにおゆずり会を始めることになったきっかけはなんだったのでしょうか。
善田:子どもの服ってすぐにサイズアウトしてしまうんです。でも思い入れのあるものやほとんど袖を通さなかったものを捨てるのはもったいないし、誰かに使ってもらえたらいいのになという思いがきっかけで始まった活動になります。
昔はもっと地域で子ども服を回して使っていく「おさがり」の文化があったと思うんですけど、今ってなかなかその繋がりがなくて。
特にわたしは移住者なので、同級生などとの繋がりがないんです。
ーたしかに。移住者と地元住民では「同世代との元々の繋がり」という点においては大きな差がありますよね。
善田:そうなんです。それに、今のお母さんたちはメルカリを上手く使いこなしていると思うんだけど、そればかりではなく直接の繋がりがあってもいいかなと思って。
もっと子ども用品を上手く回していければ、おさがりをあげる側ももらう側もお互い助かりますよね。
もらう側は経済的な面でも助かるし、そこに人が集まることで、お母さん同士が繋がる一つのきっかけになるかなと。
ーこの一軒家のワンフロアを使って開催されているところも、アットホームであたたかい雰囲気が漂っていて素敵ですよね。
善田:これまでのおゆずり会の会場は、町内の建築デザイン会社である家印(やじるし)株式会社の施設だったんです。はじめは家印さんが主催でおゆずり会を開催されていて、そこにお母さんたち何人かがサポートに入るような形から始まりました。
家印さんとしては、社会貢献として地域コミュニティーの創出と、空家の利活用という思いで始められたようですが、会社が主催となると、頻繁に開催するのは難しかったため「お母さんたち自身で企画運営していかない?」というお話をいただいて、主催を引き継ぐことになりました。
はじめは友達に「一緒にやらない?」と声をかけていって、その輪が徐々に広がり、運営に関わってくれているお母さんは14人まで増えました。
ーこういった社会貢献に繋がる活動からまた新たなコミュニティが生まれるというのは素敵ですね。
ちなみに参加者さんはどこから情報を得て来てくれているのでしょうか。
善田:いまはinstagramがほとんどですね。全く財源がないところから始まっているから、チラシを刷るお金もなかったんです。
ー情報を届けたい層にしっかり届いているというのはすごいです!参加者は1日に何人くらいいらっしゃるんですか。
善田:土日は3、40人ほど集まっていますね。朝日町以外にも入善、黒部からも来ています。
ーお子さんのお洋服は何歳児用のものが多くが集まっているのでしょうか。
善田:160cmサイズの小学生ぐらいまでは集めているんだけれど、大きいサイズはまだあまり集まっていない状況です。保育園〜小学校低学年くらいのサイズが多いですね。
子ども服だけではなく、いまは子育て用品全般が集まっています。ベビーカーにストライダー、ベビーベッドもありますよ。
値札がついているものもありますが、基本的には無料でお譲りしています。
しかし今後もお譲り会を運営していくにあたってどうしてもお金がかかっていくので、その運営費に回すため状態の良いものや生活必需品以外の嗜好品については値段をつけさせてもらっています。
ー今後、力を入れて集めていきたいという子ども用品はありますか。
保育園グッズや小学校、中学校の体操服ですね。そういったものは絶対に必要なものなんだけど、一つ一つ結構値段が高くて。在園、在学中にワンサイズで通すのは難しいから買い替えが必要になるんです。
朝日町と入善町は指定されている園児服が一緒なので、そういった園児服や体操服、制服はもっとみんなで回していけたらな、と思っています。
ーそれはメルカリではできない、直接繋がることができるおゆずり会ならではの利点ですね。
ちなみに次回からは開催地が変わるので「お茶」できるスペースをつくってお母さん同士でおしゃべりできるようにしたいですね。もう少しゆっくり滞在できるような雰囲気にしてお母さんたちのたまり場をつくっていけたらいいなとも思っています。
私は4人子育てしていて、1人目の子のときは「あれもこれも自分がやらなきゃいけない」、子育てとは「〇〇せねばならない」みたいな気持ちがあって結構しんどかったんです。いま思うと自分で自分をしんどくしていただけだなと思うんですけど。
2人目が生まれたとき上の子はまだ2才前で甘えん坊で片時も離れなかったから、ほんとにしんどかったんですよね。「これほんとに無理だ、どうしよう」ってなったときに、助けてくれる友達がいて、それにすごく救われたんです。
「助けてって言っていいんだ」「人に頼っていいんだ」ということを、改めて認識したんです。一人ですべてを抱える必要はなくて、助けが欲しい時は助けてって言えば助けてくれる人がいるんだ、って。
ーおゆずり会のお母さん同士で「助け合いの輪」みたいなものができたらいいですよね。
そうですね。子育てって一人でするものではないと思うから。少し前までは、地域みんなで子どもを見守る、みんなで子育てをするっていう雰囲気があったと思うんです。でもこれだけ子どもが少なくなってくると、繋がりを感じにくくなっている気がしています。
だから、きっかけはなんでもいいから、ちょっと外に出て、誰かと話して気持ちを共有するだけで、もっと子育てを楽しめるようになるんじゃないかな、って。
おゆずり会がそういう一つの場になったらいいなと思っています。
ー素敵なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。また新たな会場でお母さん同士の輪が広がっていくのが楽しみですね!