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少しずつ、できることから”花の世界”を変えていく

 今回は、朝日町でフラワーデザイン教室などを行っている高桜裕佳子さんにお話しを伺いました。

はじめに、フラワーデザインとはどういったことを指すのでしょうか?

 フラワーデザインとは、花や植物などを使用して様々な芸術作品を作り出すことの総称です。フラワーデザインの中には、花束やブーケ・花飾り制作のほか、皆さんがよく耳にするフラワーアレンジメント(以下、アレンジメント)も含まれていて、こちらは吸水性スポンジに花や植物を美しく配置することをいいます。

吸水性スポンジ
アレンジメントでは、この吸水性スポンジに花を挿し、配置することが多いです。

なるほど。花や植物を使った表現には様々な形がある、ということですね。いつ頃から花に携わるようになったのでしょうか?

 花は昔から好きで、本格的に花について勉強しようと専門学校に通い、卒業後は花屋さんで働いていました。30代になってからand_Flower高桜裕佳子として個人での活動をしています。日本フラワーデザイナー協会(略称:NFD)に所属していて、過去に応募した全国コンテスト「日本フラワーデザイン大賞」では2011年と2011年に奨励賞、石川県支部のコンテストでは大賞の石川県知事賞を受賞したこともあります。

2012年月刊「フラワーデザイナー」3月号掲載作品 作品名:ハルヲタベル……。
カラフルで可愛さあふれる作品。よく見ると…?

素敵な作品名ですね。

この作品には、どんな思いが込められていましたか?

 作品を作った当時は冬だったので、冬の景色が残るなか、雪解けの水たまりから待ちきれないとばかりに甘い香りの春があふれ出るイメージで作品を作りました。雫がついているような植物(アイスプラント)や、食べることのできる花(エディブルフラワー)にゼリー菓子やグラニュー糖、ゼラチンなどを使い、スイーツを作るようなイメージでデザインを考えました。これ、全て食べられる素材で作ってあるんです。

これ全部食べられるんですね!驚きです…。

現在はコンテストなどに応募はしていないのでしょうか?

 最近は応募していませんが、次回のコンテストには応募する予定です。まずは第一次審査通過できるように頑張りたいです。

普段はどんな活動をされていますか?

 普段の活動ですと、完全予約制の花屋としての販売や月に数回、アレンジメントを学びたい方に実施するレッスン、公民館事業などでのアレンジメント教室(年次イベント)も行っています。いずれも、お客様からのご要望があった際に実施しており、40~50代女性からの要望が多いですね。昨今のコロナ禍や物価高騰があったことから、販売や教室は以前より少なくなりましたが、『作る側も見る側も楽しい気分になってほしい』をモットーにお客様の要望に応えられるよう頑張っています。

毎年12月の公民館事業では、お正月に飾る花を作成します。
毎年大人気で定員がすぐにいっぱいに!

お客様の希望に沿うため、気を付けていることはありますか?

 例えば、生花を贈るにしても、花束かアレンジメントを選ぶことができます。花束の場合は、大きさが出せるので見栄え良く仕上げるのに適しています。一方、アレンジメントの場合は、吸水性スポンジに花を挿すので、花瓶なしで飾ることができます。どちらにも良い部分があり、どんな用途で飾るかによって表現方法は変わります。
 大切な方への贈り物であれば、どんな方であり、どういった思いを込めるのか、今の時期に合う花は何か、などをお客様に聞き、考えて花を選び見繕います。考えることが好きなので、お客様のご要望に沿った花を考え、デザインすることが楽しいです。

グラスチューブを花留めとした作品
どの作品もお気に入りの作品です!

お仕事を通じてよかったなと思う場面はありましたか?

 お客様から感謝の言葉を貰えると嬉しいですし、花に携わることで、自分の中に昔からある「花が好き」という気持ちをあらためて実感できるなと思います。花をアレンジすることで、花を「かわいい」・「大事にしていきたい」という思いが大きくなります。
 先日、「みんまつり」という朝日町主催のお祭りに参加させていただき、ドライフラワーを使用した作品を販売していました。普段のお客様はリピーターの方が多いのですが、みんまつりでは、私のことを知らない方が花を購入してくださり、喜んでいる姿を見て、いつもとは違う嬉しさがありました。

「みんまつり」楽しんでいただけてよかったです。ドライフラワー以外でのアレンジメント方法はあるのでしょうか?

 そうですね…プリザーブドフラワーを使用することがあります。プリザーブドフラワーはドライフラワーの一種で、生花を長期間楽しめるように保存加工した花のことで、1番良い時期の花の色素を抜き、特殊な染料を吸わせることで自由に色を付けることができるほか、生花ではないため、水やりの必要もないことが特徴です。しかし、プリザーブドフラワーは生花に比べコストが高いので、使用する頻度は少ないですね。ドライフラワーは、花から水分を抜いて作るため、カサカサした手触りですが、プリザーブドフラワーは特殊な染料を吸わせているので、生花に近い手触りです。
 他には、同じ花でもデザインの表現で見方が変わることや、意外と身近なものが花とマッチしたときに面白い相乗効果を生むこともあると思います。

色々な表現方法があるんですね

 最近のトレンドなどについて勉強するため、講習会に参加することもあります。
 教室やレッスンを行っていると、たまに、自分では思いつかない面白いデザインを表現する方が居られ、勉強になるなと思うこともありますね。

卵の殻を使用した作品
殻の欠片ごとに色を付けカラフルに!花との色合いがマッチしてます!

SDGsについて意識されていることはありますか?

 フラワーアレンジメントで使用する「吸水性スポンジ」は使用後、燃えないゴミとして捨てるものですが、最近、土に還る吸水性スポンジが発売されました。こちらは、土中の微生物によって分解される素材でできており、非常にSDGsに通ずるものだと思うのですが、コストが高く使用したことはないです…。私個人としては、吸水性スポンジの代わりに土に還る植物素材(葉、つる、竹串、爪楊枝など)や何度でも使用できるグラスチューブを花留めとしたアレンジメントを少しずつ取り入れるよう心がけています。また、普段は花を購入してアレンジメントするのですが、農家さんから規格外の花をもらったこともあり、フラワーロスについても意識していきたいなと思います。

植物の葉で花留めしたアレンジメント作品

これからの活動について取り組んでいきたいことがあれば教えてください

 花も好きですが、人と関わることも好きなので、これからも色々な出会いを通じて『花』に関わっていきたいですね。日々の生活も大事にしながら、花の可愛さ・面白さを多くの方に触れて知っていただけたら嬉しいです。SDGsについてもできる範囲で取り組んでいきたいです。

 この活動は、SDGsの目標である「12.つくる責任、つかう責任」に繋がります。コロナ禍をきっかけに花の需要が落ち込み、廃棄問題が話題になりました。花に携わる多くの方々がこの問題に様々な形で取り組んでいるのではないかと思います。需要が増えれば、花を生産する農家さんの収入が増え、新規就農者の増加にも繋がるかもしれませんね。

 高桜さんは、そこまでSDGsに取り組めていないと仰っていましたが、筆者としては、SDGsへの取り組む形は何でもよく、少しずつという考えが大事だと思います。
 お話を聞くうえで『花』は自由に表現することができる、自由に表現できるからこそ、届けたい思いを乗せることができると感じました。『花』は大切な人への贈り物として。また、日々の生活を彩るために。これからも誰かを幸せにする『花』が皆さんのお手元に届いてくれると嬉しいですね。

2011年月刊「フラワーデザイナー」1月号掲載作品
作品名:Happy☆New☆Year
吸水性スポンジを使用せずレゴブロックを花器とした遊び心あふれる作品に。
この頃からエコを意識するようになりました。